体内時計のリセットと維持に酵素が深く関係?東京大学の研究結果

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体内時計に酵素が重要

 当たり前のことなので、深く考えたことはないかもしれない。なぜ、1日周期で眠くなったり、目覚めたりするのだろうか。

 日の出や日の入りがあるからなのか。1日周期を管理してくれているのは体内時計なのだが、体内時計が365日、毎日狂わずにきちんと動く理由を探ってみたい。

「体内時計ってよく聞くけれど、定義は何だ?」とお思いの方、多いのではないだろうか。

体内に組み込まれた24時間のリズム

 私たちは通常、朝起きて昼活動し夜眠るという、地球の自転周期に合った約24時間のリズムで生活している。この生活リズムは、「朝は起きましょう」「夜は眠りましょう」というように世の中の都合で決められたものではない。

 地球上で何億年も生活してきた生物が、厳しい生存競争に勝ち抜くために、進化の過程で獲得した形質で、私たちは生まれながらにこのリズムを刻む遺伝子(時計遺伝子)をもっている

 この約24時間(24時間よりも少し長く、個人差があるが大体24−25時間)のリズムを概日リズム、またはサーカディアンリズムという。睡眠と覚醒のサイクルだけでなく、ホルモン分泌、血圧や体温調節など私たちの生理機能のほとんどはサーカディアンリズムを持ち、24時間のリズムで変動している。

光の差さない地下室で生活したら睡眠や目覚める時間はどうなるのか

 体内時計が毎日ちゃんと動いているのは、外が明るくなったり暗くなったりするからではないかと考えてしまうが、実はそうではない。

 光は入らず、朝晩寒くて日中は温かいなどの温度変化もないような、外部環境の変化を遮断した地下実験室で生活しても、1日周期で眠くなったり目覚めたりと、いつもの活動が継続する。

 昼間は体温が上がり夜間は下がるという体温変化のリズムもいつも通りなのだ。光がなくとも体内時計は正確に動いていることが分かる(※1)。

しかし体内時計をリセットできるのは光

 体内時計を唯一リセットできるのが光だ。

 実は、体内時計の周期は正確に24時間ではなく、人によって差があるが24時間より少し長い時間〜25時間なのだ。

 ぴったり24時間の地球の自転と、それよりも長い人間の体内時計、その差を縮めるために光が必要だといえる(※1)。外の気温が上がって体温も上がったという理由で体内時計がリセットされることはない。温度の変化で体内時計が狂うことはないのだ(※2)。

体内時計に酵素が重要な役割

 体内時計のリズムは、体内での化学反応で作られることが分かっている。一般的に、化学反応は温度が高くなると急激にスピードが増す。昼間には体温は高くなるので、周期が速くなってもおかしくない。しかし、体内時計は狂わない

 なぜなのか。実は、体温が上がり反応が速く進もうとすると、それに必要な酵素が不足して反応が抑えられるのだ。このことによって、反応スピードは一定に保たれているというわけだ。このことは東京大学の研究チームが解明された(※2)。

体内時計の研究で将来は時差ボケのない海外旅行に!?

 東京大学はさらに研究を進めた。体内時計は温度などで簡単には狂わないが、光の刺激では簡単にリセットされる。この矛盾するような2つの働きはなぜ両立できるのかについて、バクテリアとショウジョウバエの体内時計を使って明らかにした。その結果、一部の化学物質の量が変化して、この化学反応の速度変化を抑えていることが分かった(※3)。

 体内時計のメカニズムはまだまだ謎が多い分野だが、時差ボケの解消だけでなく、アスリートの記録更新、薬品の開発など様々な分野に役立つことが期待されている(※3)。

時差ボケのない海外旅行を楽しめる時代は、そう遠い未来ではないのかもしれない。

出典

引用・参照
※1:東京大学 理学キーワード 概日時計 https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/keywords/08/01.html *筆者要約

※2:東京大学 生物時計が温度によらずに24時間周期を刻む謎を理論的に解明
 http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_240508_02_j.html *筆者要約
※3:生物は変わらないために変わる ~周期が変わらない体内時計が時刻合わせできる理由を解明~
 
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20151125170530.html *筆者要約
参考:Reciprocity Between Robustness of Period and Plasticity of Phase in Biological Clocks
 http://journals.aps.org/prl/pdf/10.1103/PhysRevLett.115.218101
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監修者

ライター / kix

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