睡眠時無呼吸症候群は略してSAS(Sleep Apnea Syndrome)と呼ばれる。SASの診断は、いびきや眠気といった自覚症状、日ごろの睡眠状況、既往歴や生活習慣病に関しての問診をまず行う。他にも、簡単な問診で昼間の眠気を評価できる代表的な「ESS眠気テスト(エプワース眠気指数テスト)」などもある。
問診でSASの疑いがあり、医師が検査の必要性を認めた場合、多くの場合は、自宅でできる簡易型検査装置を用いた検査を行う。就寝前に、腕時計タイプの機械を一晩装着し、普段と同じように寝ている間にできる検査だ。手の指や鼻の下にセンサーを付け、いびきや呼吸の状態からSASの可能性を調べる。
鼻口気流、気管音、SpO2(動脈血酸素飽和度のことで、血液中にどれくらい酸素が含まれているかを表す)を記録する。さらに、呼吸運動や体動、心電図など測定できる項目が多い装置もある。
簡易検査結果によって、より詳しい確定診断が必要とされた場合、医療機関に一泊して睡眠と呼吸の質を調べる。ポリソムノグラフィー(Polysomnography: PSG)という検査で、終夜睡眠ポリグラフィー検査とも呼ばれる。
頭や顔、体の必要な部位にテープで電極を貼りつけ、一晩眠りながら脳波や呼吸、眼球、筋肉の動きなどを記録し、睡眠の状態を調べる。この結果を解析し、正常な睡眠の経過と比較することで、SASかどうかの診断をする。
各医療機関で異なるが、簡易検査・入院検査ともに検査から結果が出るまで1週間ほどである。
症状や状況に合った治療方法を医師と一緒に検討する。治療開始後は定期的に受診し、治療効果や体調変化を確認する。
治療方法には、症状を緩和させるもの(対症療法)と、根本的にSASの原因を取り除くもの(根治療法)とがあり、いずれも個々の患者の状態に合わせて最適な治療方法が選択される。一概にどの治療方法が優れているということはなく、重症度や原因に応じた治療方法が適用される。
肥満気味の人の場合は首・喉まわりの脂肪が気道を狭くしている可能性があるので、減量といった生活習慣の指導も治療の一環になる。また、鼻づまりや鼻の諸症状で鼻呼吸がしにくい場合には、まず鼻症状の改善から取り組む場合もある。
以下に3つの代表的な治療方法を紹介する。
まずCPAP(シーパップ:持続式陽圧呼吸療法)は、欧米や日本国内で最も普及している治療法である。CPAPとは、鼻に装着したマスクから空気を送りこむことによって、一定の圧力を気道に掛けて喉のふさがりを防ぎ、睡眠時無呼吸を予防するものである。SASの最も代表的な治療方法となっている。
もう1つの対症療法として、軽度な症状のSASには口腔内装置である「マウスピース」が適用されることもある。マウスピースは、スリープスプリントとも言われ、下顎を上顎よりも前に出すように固定させることで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぐ治療方法である。
3つめは根治療法で、外科的手術により気道をふさぐ部位を取り除く。小児の多くや成人の一部で、SASの原因がアデノイドや扁桃肥大などの場合は、外科的手術が有効な場合がある。また、米国では狭い上気道を広げる目的で上顎や下顎を広げる手術も行われているが、日本でこの手術ができる医療施設は限られている。
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