睡眠時無呼吸症候群(SAS)の代表的な対症療法としてCPAP(シーパップ)という治療方法がある。CPAPは日本語で持続式陽圧呼吸療法といい、鼻にマスクを装着し、空気を送りこむことによって、ある一定の圧力を気道に掛ける方法である。Continuous Positive Airway Pressureの頭文字をとってCPAPと呼ばれ、いまや最も重要なSASの治療法となっている。
息を吸う時、肋骨(ろっこつ)の間の筋肉(肋間筋)や横隔膜が収縮して胸腔が広がり、胸腔内は外より圧力が低くなる。これを「陰圧」といい、これによって空気が鼻や口から喉を通り、気管から肺に流れこむ。
しかし、SASの患者はこの陰圧によって、喉の軟らかい組織が内側に引き込まれ、気道が狭くなってしまう。狭くなった気道を空気が通ると、周りの組織が振動する。これがいびきの正体で、SASの患者は大きないびきをかくのが特徴である。
SASは自覚症状に乏しく、大きないびきを家族などから指摘されて、初めて病院を受診するケースが多い。そのため潜在的なSASの患者はとても多いと考えられている。
寝ている間は喉の軟らかい組織が気道に垂れ下がりやすく、気道を完全に閉鎖してしまうと、無呼吸となってしまう。SASの患者は一晩に何回も無呼吸となり、眠りが浅くなってしまう。そのため、睡眠時間はしっかりと取っているにもかかわらず、朝起きて、寝足りない、眠った気がしない、などの感覚を引き起こす。
CPAPを使うとその圧力により、喉の中にスペースが確保され、軟らかい組織を強制的に押し開く。すると患者は鼻でスムーズに呼吸をすることができるようになる。
CPAPを使った患者のほとんどが、その日からいびきをかかなくなり、朝もすっきり、昼間の眠気も軽くなったり、眠気がなくなることもある。重症の睡眠時無呼吸の患者同士を比べた場合、CPAPを使わなかった患者よりも使った患者の方が寿命が長いことも分かっている。CPAP療法は根治療法ではないが、毎日使用することによって症状を改善することができる。
CPAPは空気の通り道を強制的に押し広げてSASの症状を改善するための対症療法である。根本的な治療は、空気の通り道である喉のスペースを広げることである。生まれつき喉のスペースが狭い人、アデノイドや扁桃肥大などの疾患にかかっている人などは、外科手術で喉のスペースを広げる場合がある。
その他、肥満で首回りに肉が付いている人は、喉のスペースが狭い場合もある。この場合は、減量といった生活習慣の改善もSASを改善する有効な根本治療となり得る。
また、舌や喉の筋肉をエクササイズなどで強化することで、睡眠中に喉の軟らかい組織が気道に落ち込むことを防ぐなどの方法もある。
いびきを改善するのに簡単にできる方法として、横向きに寝るという方法がある。あおむけに寝ると、喉の軟らかい組織が気道に垂れ下がり、気道を狭めてしまう。一方で、横向きに寝れば、喉の軟らかい組織が気道を直接的に圧迫することはなく、空気の流れが阻害されにくい。
いびきをかいて寝ている人の多くはあおむけに寝ている。気がついたら横向きにしてあげるだけでもいびきが治まることが多い。
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